ハウススタジオではポートレート撮影の需要が多いですが、そもそも「ポートレート」とはどのような撮影なのでしょうか? 今回はポートレート撮影とはどのような撮影をいうのか、ポートレート撮影に向いた撮影機材はどのようなものか、カメラの設定、初心者から脱却するワンランクアップのテクニックなどを紹介します。
ポートレート(Portrait)は肖像画や肖像写真を意味し、ポートレート撮影とは人物を被写体にした撮影のことを指します。
スナップショットも同様に人物を撮影しますが、どのような違いがあるのでしょう。
一般的にポートレート撮影は、事前に撮影のテーマやシチュエーションを決めて人物を撮影します。一方スナップショットは、事前の準備はなく、日常生活の一コマを撮影する、瞬間をとらえる撮影です。またポートレート撮影では、モデルとなる人物は撮影を意識していますが、スナップショットでは写真を撮られていることに特に意識をしない、あるいは気づいていません。さらにスナップショットは被写体が人物とは限られないといった違いがあります。
ハウススタジオなどの撮影スタジオを使った人物撮影は事前に撮影のテーマやシチュエーションを決めて撮影するので、ポートレート撮影となります。
ハウススタジオでのポートレート撮影は、特別な機材は必要ありません。次のような撮影機材を準備します。
カメラは一眼レフあるいはミラーレスカメラを準備します。これらのカメラはスマートフォンやコンデジと比べてイメージセンサーとよばれる部品が大きく高精度で光を多く取り込めます。その結果、室内などのうす暗い場所でも色表現が豊かになるからです。
レンズは焦点距離35mm~80mm程度の単焦点レンズを選びましょう。単焦点レンズとは、焦点距離が固定されたレンズで、ズームをすることができません。初心者の方は人間の視界に近いとされる50mmの単焦点レンズを選んでおけば使いやすく、構図も決めやすくなります。ちなみに、レンズがセットとなって販売されているカメラにセットされているレンズは標準レンズです。標準レンズはポートレート撮影には向いていません。
ポートレート撮影に必要な機材がわかったところで、カメラの設定を紹介します。
撮影モードはマニュアルに設定します。初心者の場合、自動でシャッタースピードやF値を設定してくれる「Pモード」を選びがちですが、マニュアルモードで細やかな設定をしないと思ったような撮影が行なえません。マニュアルモードを選択して、次のように設定していきます。
F値は低めに設定します。このことで背景を程よくぼかし、被写体の人物を際立たせることができます。F値は2.8~4あたりの低めに設定しましょう。
ISO感度はAUTOで大丈夫です。マニュアルで調整する場合、自然光が十分な明るい場所では、ISO設定は100~400と低めにします。照明の暗い場所ではぐっと高くしましょう。
ポートレート撮影では動きがそこまで生じないのでシャッタースピードは遅めで問題ありません。200~500あたりに設定しましょう。
ホワイトバランスを調整することで、写真の色味が変わり柔らかな印象になったりクールになったりします。撮影のテーマに合わせた設定を選択しましょう。
最後に初心者からワンランクアップするためのポートレート撮影テクニックを紹介します。
構図を意識すると被写体を魅力的にし、バリエーションある表現ができます。ポートレート撮影では「日の丸構図」や「三分割構図」がオーソドックスです。日の丸構図は写真の中央に人物を置き、被写体の存在を印象付ける構図です。背景とのバランスをよく考えて撮影しないと単調な写真となりがちなのでバランスには気を配りましょう。三分割構図は縦横それぞれを三分割し、三分割の交点に被写体を置く構図です。構図の王道とも言われ、バランスのよい写真が撮影できます。
ポートレート撮影は「事前にテーマやシチュエーションが決まっている」とポートレート撮影とスナップショットの違いで解説したように、ポートレート撮影ではテーマありきです。テーマにあったハウススタジオを十分に吟味しましょう。無料でロケハンできるハウススタジオも多いので、現地におもむき、テーマに合ったシチュエーションが作れるスタジオか確認しましょう。
ポートレート撮影にかぎらず写真撮影は光をうまく使うのが重要です。ハウススタジオでのポートレート撮影は自然光が射し込むとはいえ、難易度が高くなります。ハウススタジオで自然光でポートレート撮影をするときは、朝夕の光が斜めに射し込む時間帯に撮影しましょう。光が柔らかくなり雰囲気のよい写真が撮影できます。またストロボ撮影では、クリップオンストロボを利用し、被写体に直接発光させず、天井を向けて発光する「天井バウンス」という撮影方法で撮影します。被写体にストロボの光を直射すると被写体に強い陰影があらわれ、立体感のない素人っぽい残念な写真になりがちです。それに対し、天井バウンスは、天井に直射された光が天井で跳ね返って拡散し、被写体を柔らかく包み込む光になります。その結果、陰影が少ない自然な仕上がりになります。
ポートレート撮影では被写体となるモデルとのコミュニケーションが大事です。モデルがいい表情やポージングをしているときは積極的に褒めましょう。また撮影に入る前にモデルをまじえてテーマをよく話し合って理解してもらうことも大事です。このことでモデルもテーマに沿った表情やポージングを考え作り出してくれます。
カメラマンとモデルが一緒になって共同作業をしているという意識で撮影にのぞむことで、自然とコミュニケーションが増え、円滑に撮影がすすみます。
ピントの位置
自立させて使うのポートレート撮影でピントを合わせる基本位置は「瞳」です。顔の中で最も印象が残りやすいパーツだからです。アパレル系の撮影などテーマによっては違ってきますが、瞳にピントを合わせておけば間違いがありません。
左右どちらの瞳にピントを合わせればいいの?という疑問があるかもしれませんが、モデルの立ち位置で手前にくる方の瞳にピントを合わせると覚えておきましょう。正面からの撮影ではどちらでもかまいません。
ポートレート撮影は商品撮影とは違い人間が被写体なので、表情やポージングが常時変化します。そのためできるだけ多くの枚数を撮影することで、イメージに合った撮影結果を得ることができます。
ポートレート撮影について、おもにハウススタジオでの撮影を前提に解説しました。ポートレート撮影は一見簡単なように思えますが、テーマに沿ったなかでカメラマンが出来上がりをイメージし、モデルにも十分理解してもらい、カメラマンとモデルが思い描くイメージが重なることではじめて撮影できる奥の深いジャンルです。この記事で紹介したポイントをおさえて印象的なポートレートを撮影しましょう。
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